3JAUSシンポジウム

開催日 201422日(日)13:00?17:0012:30受付開始) 
   ※17:30より懇親会(参加費500円)
会 場 東京海洋大学品川キャンパス楽水会館 

 

シンポジウムプログラム 
1.1300−1350

南部もぐり(ヘルメット潜水)の伝統と各潜水機実習  
  岩手県立種市高等学校 海洋開発科  下川 顕太郎 
                          
     コメンテーター 須賀次郎 

2.1350−1430

中央大学海洋研究部の活動紹介 
  関東学生潜水連盟 中央大学海洋研究部 
    中央大学海洋研究部  藤島靖久 監督  
齋藤慶介 主将
  
3.1430−1510

ダイビング事故防止について事故当事者の視点から            

                          JAUS会員   田中恒明 
                        
コメンテーター 久保彰良 

4.1510−1550

レクリェーショナルダイビングと人工魚礁 
           独立行政法人水産総合研究センター 
          水産工学研究所 高木儀昌  

 ☆ プライマリーコース・アンバサダー 称号授与

5.1600−1700

ウエアラブルカメラ研究会映像作品発表 
        コメンテーター  齋藤真由美 

 

 総合司会  早稲田大学先進理工学部 教授 中尾洋一 

 

 懇親会、ワンコイン会費で隣の学生食堂で1930ごろまで 

 

1.南部もぐり(ヘルメット潜水)の伝統と各潜水機実習  
  岩手県立種市高等学校 海洋開発科  下川 顕太郎 
                          
     コメンテーター 須賀次郎 

 

 岩手県立種市高等学校 海洋開発科 には、立派な施設(訓練プール)があり、潜水実習船があり、充実した教育カリキュラムがあって、日本で唯一の、「潜水を高校生に教えている」学校である。

 

 この学校の潜水教育の核心は、ヘルメット式潜水「南部もぐり」である。

今、ヘルメット式潜水は衰退しつつあり、工事作業潜水では全体の10%、海産(漁業)潜水では、全体の20%である。海産は、全体が衰退しており、資源保護のためもあるので拡大が望まれるとしても最小限度である。その中で、なぜ若者たちにヘルメット式潜水を教えるのだろうか。そのなぜを聞きたかった。予想もしていたのだが、発表で十分に分かった。

 

 @、もしもこの学校がヘルメット式潜水をやめてしまえば、この潜水機の技術が消えてしまう。南部もぐりという形で、一つの海の文化になっている。

 A 潜水も、武道、スポーツと同様に、心・技・体が根本である。潜水は、その三つのうちで、心が最も重要と考えられるのだが、その心の教育指導が、意識されていない。実は、安全のためにもっとも重要な部分である。その心の指導が、南部もぐりというかたちでのヘルメット式潜水実習の目的なのであろう。

 B 潜水を歩く潜水、泳ぐ潜水に分けて見た時、作業潜水の送気式は、歩く潜水機である。そのうちで、デマンドバルブがついた全面マスク式は、習得が容易である。容易であることが、90%を占める理由になっている。ヘルメット式は習得が容易ではない。だから、ヘルメット式を習得すれば、作業潜水のすべての技術を習得することができ、全面マスク式は難なくできる。種市では全面マスク式のハードハットも練習しているが、それは、潜水の練習ではなくて、切断、溶接の練習という形のようだ。これは3年次にやるのだが、おそらく、1年、2年で、ヘルメット式を習得していれば、ハードハットは何の問題もない。ヘルメット式は頭で排気弁を押して、浮沈、バランスをとっているが、ハードハットでは、このことは何も必要ではない。

 

 懇親会の席上で、JAUSで、この学校への体験ツアーを定期的に、できるだけ数多くやろう。その時、こちらからもプライマリコースの指導もおこなうことにしようと話し合った。

 

中央大学海洋研究部の活動紹介 

  関東学生潜水連盟 中央大学海洋研究部 
    中央大学海洋研究部  藤島靖久 監督  
齋藤慶介 
主将


  
 

現在の学連のダイビング部活生活を見ると、各大学若干のちがいはあるが、二年生が一年生を教え、三年生はそれをカバーする形で一年生講習が始まる。5−6月と二か月はそれで、プールとか、限定された水面で練習する。6月―7月ぐらいまでの間に、ダイビングショップなりダイビングサービスなりで、インストラクターからC−カードの検定を受けて、C−カードを取得する。その後、夏合宿、秋の合宿でそのシーズンは終わる。C−カード講習を行うインストラクターは、例外はあるだろうが、C−カードを発行するだけの付き合いで合宿とかツアーは自分たちだけで行う。監督とかコーチがいれば、その監督下で行うが、居なければ、自分たちだけで行う。一年の経験しかない二年生が一年生を指導する。監視する三年生といっても経験は2年しかない。だから、監督、コーチがいない大学は薄氷を踏むような思いがする。生命の危険があるスポーツ活動で、監督・コーチの居ないスポーツなど一般には想像できない。しかし、17大学が参加している学連の監督・コーチの名簿は発表されていない。

監督・コーチが居ない部については、上級生の実力を向上させなくてはいけない。そして、学連の安全についてのバックアップをする組織と機会をつくろうと、2003年、東京医科歯科大学の真野先生、順天堂大学の河合先生らにお願いし、そのバックアップの元にSAI (スチューデントアシスタントインストラクター)と呼ぶ集まりを作った。この時、河合先生のお話で、「安全とは、知識と経験の積み重ねです。そして記録を残して継続させることで達成されます。」というフレーズがあり、これこそ学連にふさわしい言葉であり、この方針にそって、この活動を続けることとしたが、2011年で活動が停滞し、休止している。

JAUSを作った2010年のシンポジウムで、学習院大学の宮崎監督に講演をしてもらった。そして、2011年3月、監督・コーチのミーティングを開催しようと、設立有志ということで、学習院大学、芝浦工業大学、法政大学からは須賀潮美に声をかけて、3月18日がその第一回の集まりの予定だったが、3月11日の震災で、これは立ち消えた。その2011年はお休みして、2012年のシンポジウムでは芝浦工業大学顧問の足立先生と、監督の北川さんにお話ししてもらった。そして2014年の第三回シンポジウムが中央大学である。

 

 今回発表の中央大学は、この典型的なシステムが充実しているクラブであり、昨年の芝浦工大も一昨年の学習院も良いクラブであり、良いシステムをもっていて、優劣はつけられないが、監督と主将が、一緒に発表し、そして、卒業する、八木沢君が結びで発表するなどと、いいチームワークが感じられた。団体活動はチームワークが最重要である。

 

 一般社会人であってもクラブ活動というのが、ダイビング活動の原型であり、バディシステムはクラブの最小単位ともいえる。バディがいくつか集まってクラブを作る。クラブと名がつかなくても、親密な集まり、互いの思いやりがなければバディシステムは成立しない。ダイビングショップもダイビングポイントにあるサービスも広義のクラブだと思う。ショップによる囲い込みなどが良く問題にされるが、クラブ活動が、外から見れば囲い込みに見えるのではないだろうか。

大学の部活動の管理システムは、それらのショップやサービスのクラブ会員の管理とは違うが、ある部分は、学生クラブがその模範になり得る。

学生クラブとしての活動の安全は、それぞれのメンバーの役割分担、学年による役割と行動の明確化、そして、団体としてどのような責任体制で臨むのか、監督、コーチ、OB会のあり方、そして、それぞれの一つ一つの行動の意味を通達、理解させる組織体制、これらについての発表としては、大変に優れたものだったと考えている。まず組織があって、明確な記録があり、記録を行動規範に反映させ、全体として責任を取って行動するのが学生クラブの活動の基本で、その上で、メンバーそれぞれの誇りと、互いに助け合う体制が危険を回避する。

この態勢についてみた場合、中央大学の態勢は大変に優れたものである。

言うまでも無く、40年の歴史があるということは、40年前のダイビングもやってきたのだから、40年の無事故は、幸運の連続であったかもしれない。その連続を振り返り、繰り返すけれど「安全とは、知識と経験の積み重ねです。そして記録を残して継続させることで達成される。」

その安全管理についてのまとめは、以下のような発表があった。その一つ一つは常識であるが、常識をきちんと守れること以外に組織としての対応はない。事故は個人的な事情で起こるが、以下のような遵守事項を守っていたうえでの個人的な事情には、責任を持ちえない。

 

安全管理についての遵守事項として

◇ 体調管理の徹底

◇ 万全な器材の使用

◇ 当日・翌日に潜水意思のある者は禁酒

◇ 潜水ポイント・危険生物の把握

◇ 適切な海況判断

◇ 正確な浮力調整

◇ バディシステムの遵守

◇ 無減圧潜水の徹底 ⇒ 残圧30以下の潜水禁止

◇ 潜水フラッグの使用

◇ いかなる場合にもウォッチャーを設置する

◇ 能力に適した潜水 ⇒ 睡眠時間・体調・海況・自分のスキルを考え、決して無理を

  しない

◇ 上記の点について、ガイド・インストラクターに指示を受けた場合には、それに従う

◇ 5m5分の安全減圧を可能な限り行う

 

今後も、安全管理についての規定順守を徹底できる組織を維持し、幸運による事故回避ではなく、OB会、監督、コーチのスタッフ、現役の協力のもとに、ダイビング活動を人格向上に役立てつつ、ダイビングを楽しみ、関東学生潜水連盟の範としてあり続けていただきたい。

 

 

ダイビング事故防止について事故当事者の視点から            

                             JAUS会員   田中恒明 
                        
    コメンテーター 久保彰良 

 
 2010年5月、発表者の田中さんと奥さんは、沖縄の伊江島近くの中の瀬というポイントに潜水した。ガイドが一緒であり、5日間、毎日2ボートで10本潜る予定であり、その4日目の1本目、通算7本目の潜水で事故が起こった。

海況は波高が05−1m、流れが0.8−0.9ノット、透視度は20−30mであった。

奥さんのダイビング経験はタンク163本であり、水泳も上手でアスリートであったと言える。

まず、奥さんがエントリーし、続いて田中さんがエントリーしたが、奥さんの姿が見えない。続いてガイドが潜降して来て、見まわしたが見えないので、田中さんをボートに上げて、自分は水中で捜索したけれど見つけられない。

救助を頼み、ヘリコプターも巡視船も来たが見つけられない。1時間30分後、フェリーが見つけて巡視船に引き上げられたが死亡、解剖の結果溺死と判定された。

那覇地検で、訴訟調査の結果、業務上過失致死罪で送検されたが、田中さんは、罪を認めたからそれで良いとして、民事訴訟はしなかった。

 

ここまでは経過についてである。次に事故はどうして起こったのか。

@まず一人になってしまったこと。

A一人になってしまった時、ガイドは水に入って監視しては居なかった。

B一人になることを予測した安全のための対策が取られていなかった。

他にもあるだろうが、この三点、バディシステムが実行されていたら、ガイドが監視していたら、潜降索に伝わって潜っていたら、この事故は起こらなかった。

@は、バディである二人の責任であり、ガイドがかかわっていない潜水であれば、事故は二人の責任であり、ガイドはそこにいないのだから、責任問題にはならない。Aは、ガイドにはいろいろなあ言い分があるのだろうと思うが、訴訟調査の結果がすべてである。検事は業務上過失致死罪として送検し、ガイドはそれを認めて罰金を払った。

 

@一人にならないこと、一人にしないことは、言い古されたことであるが、安全対策のその一は、如何にしてバディシステムを守るか、守らせるかである。ガイドの言い分があるとすれば、バディシステムは二人がまもるものであり、ガイドが守らせるものではないということだろう。しかし、一般には、このようなケースの場合、その水域、地形のブリーフィングを行い。先に水に入るか、もしくは三人同時に、もしくは二人が水面で一緒になるのを見届けてから、その時はすでにタンクを背負っていて直ちに水に入らなければいけない。

このような手順は常識ではあるが、ルールとして決まっているわけではない。JAUSも、他のすべての団体も、一人にしてはいけないと口が酸っぱくなるほど唱えてはいるが、このような目を離さないための手順を文章化していることはない。

前の発表についての感想で「安全とは、知識と経験の積み重ねです。そして記録を残して継続させることで達成される。」と述べた。

ガイドもしくは安全管理を行うインストラクターは、ボートからの入水に際して、1分以上の時間差があってはいけない。水面でバディが一緒に肩を並べるのを見届けなければいけない。」というようなルールを設けるべきである。発表者の田中さんも指導団体のプログラムとは別に、このようなガイド手順のルール、マニュアルを設けるべきだと発表している。

ここで、ガイドとはそもそも何なのだという議論をしておかなくてはならない。引率するメンバーの命に責任を持たなくてはならないのだろうか。業務上過失致死罪で送検されたということは、あきらかに、業務としてメンバーの命を守る責任があるということの公的な認知である。バディシステムを守ろうが守るまいが、とにかく目を離していて、安全のための監視がなされていないときに事故が起これば、ガイドは責任を追求される。業務上過失致死罪になった理由は、お客を先にエントリーさせ、3分後に入ってきた。この時間関係はダイコンによって判明したのだという。また、このポイントはガイドが初めて来たポイントだった。そして、潜降ロープもなく、アンカーロープも無かった。

お客が先に入って3分後にガイドが入ってきた。なぜそんなことになったのだろう。そこには、ストーリーがあり、多分、ガイドにも言い分があるだろう。その場にいたわけではない者としては、推測による論を述べる他ない。

まず、ガイドが制止したのに振り切って入って行ったということはなかった。

言うまでも無く、ガイドも、お客二人もバディシステムの重要性については十二分に理解していたはずであるから、まず、考えられるのは「慣れ」である。5日間、毎日2ボートで10本潜る予定であり、その4日目の1本目、通算7本目の潜水の間に、この人たちならば大丈夫という「慣れ」の気持ちがガイドにあったのではないだろうか。

コメンテーターをお願いした久保さんのお考えならば、バディシステムというものの、理解と手順がこの事故の状況とはまるで違うだろう。バディが互いにバディチェックをおこない、ガイドも器材を着けた状態で、このチェックに加わる。そ久保さんは、どんな状況であってもそれを忠実に実行しなければならない。ガイドもそして、田中さんもバディシステムの意味を本当に理解、実行していなかったことであり、それは当然、ガイド側の責任になる。

お客商売としてのガイドダイバーであれば、自分は完璧に準備をして、お客の準備を手伝い、その場の状況に応じて、水面ですぐにまとまれるような間隔でエントリーする。決して水中でのまとまりではなかったはずである。もしも水面での待機がつらい状況であったとすれば、潜降索が鍵になる。

それでなかったことは明らかである。

先に書いた、「ガイドもしくは安全管理を行うインストラクターは、ボートからの入水に際して、1分以上の時間差があってはいけない。水面でバディが一緒に肩を並べるのを見届けなければいけない。」という表現でも良い。とにかく、ガイドの行動指針を決めるべきだ。

 

およそ、ダイビングの事故には、ああしていれば防げた、こうしていれば防げたと言える事故と、どうしようもなかったという事故がある。事故を皆無にすることは無理でも、ちょっとした実行可能なマニュアルがあれば防げるような事故は皆無にしたい。

それが、2010年に発足した水中科学協会の主目的の一つである。

 

この報告の最初に書いた

B一人になることを予測した安全のための対策が取られていなかった。

他にもあるだろうが、バディシステムが実行されていたら、ガイドが監視していたら、潜降索に伝わって潜っていたら、この事故は起こらなかった。

安全確保のためにはソフトと同時にハードも大事だと考えている。ソフトは、ここまで書いてきた@バディシステム、Aガイドのエントリー手順である。ソフトが最重要であり、きちんと守られていれば、別に特別の手間もお金もかからない。しかし、ソフトは必ずしも守られるとは限らない。ここでいうハードとは、何かの理由で、行動が思うに任せない、失敗した時に、救い、補う、空中サーカスの下に張られた安全ネットのようなものである。

ロープに浮環を結んで流しておくとか、エントリーする舷側から、入るとすぐにつかまれる潜降索を降ろしておくとか、これに掴まるように指示しておいてから、掴まるのを見届けて、ガイドがエントリーすれば、間違いはない。

 潜降索とその使い方がルールになっていればこの事故は起こらなかった。今後も同じようなケースが起こりえる。ちなみに、田中さんが良く行かれている宮古島のダイビングサービスでは、潜降索がつかわれており、事故の起こったサービスでは潜降索がないことに不審に思ったと言われている。その時に潜降索を請求していれば、ともきっと悔やまれただろう。

 田中さんも書いているが、「このようなことをローカルルールとして、マニュアル化して、自主的に遵守しなければいけない。」そのローカルルールには、潜降索のこと、そしてガイドダイバーの在り方について明記されているべきだろう。ローカルルールとした理由は、地域の差があるし、船の設備の差もある。
「このような事故を防ぐには、指導団体とは別に安全ダイビングの運用マニュアル作成が必要と考える。客観的な視点から安全を考えて作った運用マニュアルこれから目指すものが見えてきたと確信する」とかいてくださった。これこそがJAUSが求めるものであり、今後、大学、あるいはクラブ、などの発表で行いたい核心である。

 この発表について、反論もあるかもしれないが最後のまとめとして
 @バディシステムAガイドダイバーの安全管理の在り方、Bもしもの場合に備えるハードの用意が無く、この三つのうちで一つでも機能していればこの事故は起こらなかった。@のバディシステムの遵守は当人の責任であるという反論がなされるかもしれない。もしそうであっても、それを注意し押しとどめるのがガイドダイバーの安全管理であり、いわゆる予見義務違反に相当する。

 

 なお、ここに書いたことはこのシンポジウム編者である須賀の感想であり、決して結論ではない。発表者の田中さんのご意向をうかがった上で、コメンテーターをお願いした久保さんのご意見もまとめていただいて、出来れば、判決主文を入手した上で、さらにディスカッション、検討をした結果を研究発表誌に結論的にまとめて行きたいと考えている。

 

レクリェーショナルダイビングと人工魚礁 
          独立行政法人水産総合研究センター 
          水産工学研究所 高木儀昌  

※ 高木先生はJAUSの正会員であり、発表でも映像を見せてくれたが、巨大な高層魚礁を考えだし設計した実績がある。

 ヒラメを対象魚にした低い、十字礁と呼ばれる魚礁に中層に浮く浮魚礁のようなものを付け加えたら、集まる魚の種類も数も変化したことから、浮魚礁の高さまで高くした魚礁が作られた。高層魚礁にあつまるマグロなどの映像が映写された。


 発表のレジュメから

 1.はじめに

 人工魚礁の設置は漁業者自らが漁場を広げ、収入を増大させるためにはじめられたものであるが、やがてこの事業が国や県の税金で行われるようになって、当初は石(投石)や廃船、電信柱などを沈めていたものが、コンクリート製や鉄性にものになり、規模や形も様々なものが作られるようになった。

 漁業者は高齢化し、漁業者数は減少の一途をたどり、人工魚礁の造成も減少傾向になっている。特に生産性の高い沿岸の水深30m以浅の海域ではほとんど造成されなくなっている。この生産性の高い海域では様々な開発の可能性を残しているが、漁業にその力はなく、国の制度でも限界にきている。

 新たな開発のためには、漁業と共存できる、海を海として楽しんでいる多くの国民と協力する形を構築する必要がある。

 2.人工魚礁に集まる魚

 人工魚礁は、優良な漁場となっている天然の岩山(天然礁)を人工的に作ろうとしたものであり、天然礁で見られる魚は同じように見られるが、海域、人工魚礁の規模や形で集まり具合が異なり、季節によっても変化する。

 3・人工魚礁の形と集まる魚の関係

 形が変化することで集まる魚が変わり、行動が変わるが、行政的には、人工魚礁の形で集まる魚が変化することは認識されていない。結果として形と魚の関係についての研究は進んでいない。この研究を進めるためには多くの形と集まる魚の関係を調査する必要があり、この調査は時間とお金がかかる割には得られる結果に効果が認められないからであるが、効果の高い形の魚礁を作る研究を進めなければ効果的な造成ができない。

 ※、この部分にレクリエーショナルダイビングとしての人工魚礁調査と研究の余地がある。

 4.魚の生態の解明

 人工魚礁に魚が集まる理由は、餌場、逃避場、産卵場、休息場として利用されていると言われている。しかし、魚と魚礁の位置関係は、従来行われてきた潜水調査から得られた魚礁周辺での魚の観察結果をまとめたもので、魚礁周辺での行動の意味を分析した結果ではない。

 ※、人工魚礁に集まる魚の生態観察によって、魚の生態を研究することができる。

 5.レクリエーショナルダイビングと魚礁研究

 人工魚礁は、日本全国、北海道から沖縄まで様々な形のものが設置されている。そのうち、漁業に使われていないところも多くあり、漁業者の理解が得られれば、レクリエーショナルダイビングの活動の場を拡大できる可能性がある。

 特に沿岸域に設置されている人工魚礁は古いタイプのものがほとんどで、今後の開発によって集魚効果を高めることが出来れば、漁業者との協力が得られやすくなり、沿岸漁業にレクリエーショナルダイビングの活動を役立たせることもできやすくなる。

 私たちは、既存の人工魚礁のように陸上で定形のものを制作し、海域に設置するのではなく、ダイバー自らの手で、海中で組み立てられるプラモデルのような人工魚礁を計画している。このように人工魚礁を懐中で少しずつ組み立てることで、魚の集まり具合を観察しながら、必要な部材のみを取り付けることができ、結果として効果的な魚礁に仕上げることができます。また、予定の形を変えることも可能で、自分たちだけの人工魚礁にすることもできます。

 このように、潜水を楽しみながら海中に人工魚礁を少しずつ組み立ててて、同時に集まってきた魚の行動を写真やビデオで記録することで、魚と形のの関係や魚種別に効果的な人工魚礁の形状が研究出来たり、魚の生態を明らかにすることができる可能性があります。

 JAUS人工魚礁研究会の計画・企画

 水中活動の目標の基本はいまや水中撮影である。ダイバーのほとんどがカメラを手にして、あるいはウエアラブルカメラの普及によって身に着けて潜水する。撮影の基本目標は記録であり、記録の目的は記念撮影、生物の観察撮影である。

 JAUSではウエアラブルカメラを取り上げて、2012年より積極的に研究を行い、ウエアラブルカメラ研究会をつくり、2013年9月のフォーラム、今回2月2日のシンポジウムでも作品を発表して、着々と技術的に成長を続けている。

 ウエアラブルカメラは、一面、水中リサーチ用のカメラとも言える。生物の観察撮影を人工魚礁を対象に行えば、すなわち人工魚礁調査である。ウエアラブルカメラ研究会が多用しているポールカメラなどは、魚礁の奥深くへ挿入して撮影が可能である。しかし、アトランダムに撮影された画像では、調査としての成果に結びつかない。

 ウエアラブルカメラ研究会の活動として、活動ブランチとして、人工魚礁撮影研究グループを結成しようとしている。

 その一環とも成るべく、今回の高木先 の発表をお願いし、リサーチについてのアドバイスもしていただく予定です。